障害福祉サービス療養介護のサービス・加算報酬について、ハンドブック報酬編の内容を分かりやすく解説します。
療養介護って?
療養介護は、病院で高度な医療ケアを受けている重度の障害を持っている方に対し、日中に病院と同等の医療ケアを、ご自宅や施設など、ご本人が希望する場所で提供するサービスです。
具体的にはこんなことをします
- 機能訓練: 日常生活動作の向上を図るための訓練
- 療養上の管理: 健康状態の観察や管理
- 看護: 医療処置の実施
- 介護: 食事や排泄の介助など、日常生活のサポート
- 医学的管理: 医師による定期的な診察や指示に基づく医療行為
これらのサービスを総合的に提供することで、障害のある方が、可能な限り自分らしい生活を送れるよう支援します。
対象となる方
療養介護は、病院などでの医療ケアに加えて、常に介護が必要な重度の障害者の方を対象としたサービスです。具体的には、以下の①~④のいずれかに該当する方が対象となります。
① 障害支援区分6、気管切開による人工呼吸器を使用している方
・24時間体制の医療的なケアが不可欠です。
②障害支援区分5以上で、以下のいずれかに該当する方
・重症心身障害者や進行性筋萎縮症患者など、重度の身体障害がある。
・医療的ケアが必要な度合いを示す医療的ケアスコアが16点以上。
・市区町村の認定調査で10点以上、医療的ケアスコアで8点以上。
・意識障害があり、医療的ケアスコアで8点以上。
※重症心身障害者:重度の身体障害と知的障害を持つ方
進行性筋萎縮症:筋肉が徐々にやせ細り、力が弱くなっていく病気の総称
遷延性意識障害:重度の昏睡状態が長期にわたって続く状態
③市区町村が認めた方
・①または②に該当する方と同様の状況にあると市町村が判断した方。
④特定の施設に入所または入院していた方
・重症心身障害児施設や指定医療機関に入所・入院していて、療養介護への移行が必要な方。
療養介護サービス費の考え方
療養介護サービスの費用は利用者の障害の程度や定員、人員配置によって単価が異なります。
基本報酬について
療養介護 サービス費 | 40人以下 | 41〜60人以下 | 61〜80人以下 | 81人以上 | |
(Ⅰ) | 9740円 | 9480円 | 9000円 | 8610円 | 人員配置2:1以上 区分6:50%超 |
(Ⅱ) | 7100円 | 6740円 | 6250円 | 5950円 | 人員配置3:1以上 |
(Ⅲ) | 5610円 | 5320円 | 5020円 | 4810円 | 人員配置4:1以上 |
(Ⅳ) | 4520円 | 4160円 | 3850円 | 3660円 | 人員配置6:1以上 |
(Ⅴ) | 4520円 | 4160円 | 3850円 | 3660円 | 人員配置6:1以上 経過措置利用者 |
旧重症心身障害児施設から療養介護への移行に関する経過措置について
従来、18歳以上の重度の知的・身体障害のある方は、主に「重症心身障害児施設」に入所していました。今後は「療養介護」に移行することになり、本人の希望によって障害支援区分の認定を省略し、施設の定員数に応じて、一定の単位数(8460~9150円/日)が支払われることになりました。
療養介護サービスにはどんな加算がある?
療養介護サービスには様々な加算があります。特徴的なものを中心に各種加算・減算を紹介します。
定員超過利用減算 基本報酬の70%を算定
定員超過利用減算は、定められた利用定員を超えている場合に報酬が減額されます。
- 1日あたりの利用者数が定員を超過している場合
- 定員が50人以下で、1日の利用者数が定員の110%を超えると減算対象となります。
- 定員が51人以上で、1日の利用者数が定員から50を引いた数に105%を掛け、さらに55を足した数を超えると減算対象となります。
- 過去3か月間の平均利用人員が定員の105%を超過している場合
- 直近3か月間の平均で、利用者が定員の105%を超えると減算対象となります。
サービス提供職員欠如減算 基本報酬の50〜70%を算定
定められた職員の数が不足している場合に報酬が減額されます。
- 職員の数が基準を満たしていない場合
・定められた職員の数が、1割超不足している場合、翌月から減算となります。
・定められた職員の数が、1割以内で不足している場合、翌々月から減算となります。
・減算される金額
・減算適用1ヶ月目と2ヶ月目:所定単位数の70%が算定されます。
・減算適用3ヶ月目以降:所定単位数の50%が算定されます。
サービス管理責任者欠如加算 基本報酬の50〜70%を算定
サービス管理責任者(サビ管)が定められた人員基準を満たしていない場合に、減額となります。
サビ管は利用者の個別支援計画作成やサービスの質の向上など、非常に重要な役割を担っています。
- サビ管が不足している場合:
- サビ管の数が不足している状態が、発生した月の翌々月からサビ管が充足する月までの期間に減算が適用されます。
- 減算適用1ヶ月目から4ヶ月目:所定単位数の70%が算定されます。
- 減算適用5ヶ月目以降:所定単位数の50%が算定されます。
地域移行加算 5000円/回(入院中2回、退院後1回まで)
入院中の利用者に対して退院後の生活に向けた支援を行った場合に加算の対象となります。
具体的には、退院前の相談援助や退院後の訪問支援といった、利用者が地域社会で自立した生活を送れるようサポートするための支援に対して、加算が認められます。
加算されるケース
- 入院中2回、退院後1回を限度:1人の利用者に対して、入院中に2回、退院後に1回の相談などの支援を行った場合に、1回につき5000円の加算が受けられます。
- 退院前の相談援助:入院期間が1か月以上見込まれる利用者に対して、退院前に退院後の生活に関する相談などの支援や関係機関との連絡調整を行った場合。
- 退院後の訪問支援:退院後30日以内に居宅を訪問し、相談などの支援を行った場合。
福祉専門職員配置等加算 40〜100円/日
指定の資格を持つ職員を一定割合以上配置することで、追加の報酬が加算されます。
以下の(Ⅰ)〜(Ⅲ)に分かれており、それぞれの条件を満たす事業所が加算の対象となります。
- 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ):1日あたり100円
常勤の生活支援員のうち、有資格者が35%以上。 - 福祉専門職員配置等加算(Ⅱ):1日あたり70円
常勤の生活支援員のうち、有資格者が25%以上。 - 福祉専門職員配置等加算(Ⅲ):1日あたり40円
生活支援員のうち、常勤職員が75%以上、または勤続3年以上の常勤職員が30%以上。
有資格者とは?
社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、公認心理師の資格を持つもの
人員配置体制加算
基準よりも利用者一人あたりの職員数を増やして、人員を配置している事業所が対象となります。
人員配置体制加算は、主に経過的療養介護サービスと療養介護サービスの事業所が対象となります。
- 経過的療養介護サービス
利用者1人に対して、従業員1.7人以上の配置を行っている場合。
対象者:重症心身障害者や疾患により身体機能が低下している方 - 療養介護サービス
利用者1人に対して、従業員2.5人以上の配置を行っている場合。
対象者:常時介護を必要とする医療的な状態にある方
それぞれのサービスの種類や事業所の定員数によって、加算される単位数が異なります。
◯経過的療養介護サービス費(Ⅰ)
61〜80人以下 | 600円/日 |
81人以上 | 170円/円 |
◯療養介護サービス費(Ⅱ)
40人以上 | 1700円/日 |
41〜60人以下 | 2000円/日 |
61〜80人以下 | 2240円/日 |
81人以上 | 2370円/日 |
障害福祉サービスの体験利用支援加算 3000円/日
利用者がサービスを体験利用した際に、対象となります。体験利用開始から15日以内まで。
集中的支援加算 10,000円/回(3ヶ月以内で月4回まで)
強度行動障害のある利用者の状態が悪化した際に、専門性の高い「広域的支援人材」を招いて、集中的な支援を行った場合に対象となります。
広域的支援人材とは?
複数の地域や広範囲にわたって支援を行う専門的な人材
その他の加算
他の障害福祉サービスでも対象となる事が多い加算・減算を簡単にご紹介します。
◯個別支援計画未作成減算:基本報酬の50%〜70%算定
利用者の個別支援計画が作成されていない場合、期間に応じて減算となります。
◯情報公表未報告減算:基本報酬の5%減算
情報公表制度が未実施
◯業務継続計画未策定減算:基本報酬の1%減算
業務継続計画未策定
◯身体拘束廃止未実施減算:基本報酬の1%減算
①身体拘束の記録②委員会開催③指針整備④研修実施がされていない
◯虐待防止措置未実施減算:基本報酬の1%減算
①虐待防止委員会開催②虐待防止研修実施③担当者の設置がされていない
◯福祉・介護職員等処遇改善加算
職員の賃金改善など一定の基準に適合する取り組みを実施している場合。別途、概要説明ページを作成予定。
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